くらくらしちゃった

くらくらしちゃった

今江祥智 *文
宇野亜喜良 *絵
旺文社こどもの本
昭和52年7月初版 / 22.5×16 / 56p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜ef19-i-1 ]

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いたずらでもしたのでしょうか、おしおきで蔵へ閉じ込められてしまった“しゅん”…
真っ暗だった蔵の中ですが、目が慣れてくると、いろいろなものが見えてきます。

ひいじいちゃんがひいばあちゃんに逢いに行くときに乗っていた自転車、釣り自慢のじいちゃんの魚拓、この町で初めてテニスをしたばあちゃんのラケット、大戦の最中にとうさんが町の教会から買い取ったオルガン、とうさんが大阪中探してかあさんに買ってきた帽子...

これまでに聞いたエピソードを想いながら、みんなが若かった時のことを考え、少しずつ歳を取っていくんだなあと思ったら、ふうわりと思い浮べたのは、“かなえちゃん”の顔。

実は、しゅんが蔵に閉じ込められてしまったのは、かなえちゃんの笑顔が見たくてしたことが原因だったのですが…!

今江祥智さんのお話を、宇野亜喜良さんのイラストで愉しめるこの児童書のような絵本のような御本は、“しゅん”という名の少年の初恋が描かれた珠玉の1冊です。

まだそれが恋というものなのかどうかも分からないけれど、笑顔を見たい!という一心でかなえちゃんを喜ばせようとするしゅんと、そんなしゅんをかばおうとして真摯な気持ちでお父さんに謝りに来てくれたかなえちゃん、2人の少年少女がとても初々しいです。

タイトルは、いきなり蔵が開いて光が入り、目がくらくらしたことと、かなえちゃんへの恋から頭が“くらくらしちゃった”ことを掛けていて、とても洒落ているのですが、“蔵”の語感とも秘かに掛けているのでは…と想ってしまうのは、お話の中に鏤められた今江祥智さんのユーモアが愉しいからでしょうか♪

また、季節が終戦を迎えた夏ということも相まって、途中で出てくる戦争のエピソードと、“しゅん”の先祖が恋をして結婚をして子どもを授かって... という連綿と続く命の営みが、命の尊さも感じさせてくれ、初恋というテーマに留まらない深いしみじみとした読後感があります。

宇野亜喜良さんのイラストも幻想的で素晴らしくて、前半のモノクロームのページから、だんだんと色づいてきて、かなえちゃんが初めて登場するところでぱっと明るくカラフルになるところなど、見所です♪

本を閉じても、夏の空の眩さ、初恋の瑞々しさ、そして命の美しさが、いつまでも心の中できらめいているような1冊です.:*・゜
どうぞご堪能ください.:*・゜

Information

出版社品切れ または絶版 となっています >2019年7月現在

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