ペーパードール

ペーパードール

田辺聖子 *作
宇野亜喜良 *絵
TBSブリタニカ / 現代作家ファンタジー1
1979年9月初版 / 30.5×22 / 32p
ハードカバー

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はじめて入った古本屋の店先で、青年が古い絵本をふと開くと…
“とつぜん、風がペエジから舞い立ちました。”。

青年がページを辿っていくと、生まれたばかりの赤ちゃんが成長していくお話のようです。やがて美しく成長した少女は、窓ぎわに頬杖をついて、夜の港を眺めています。まるで誰かを待っているように…。

次のペエジで、朝食をとりながらお茶を飲む少女がこちらを向いてにっこり微笑んだような気がして、青年はびっくり!絵本を手に入れ、家路へと急ぎます。

そして次の日、シナモンの良い香りで青年が目覚めると、絵本から抜け出た少女が、絵本と同じ朝食を用意していて…!

ひとりぼっちで孤独な青年が、不思議な絵本を手に入れたことから始まる、淡い恋のお話です。

面白いのは、少女が、絵本から抜け出たペラペラな紙のままの“ペーパードール”だということで、風に飛んでいかないよう、栞のように手帖に挟まれたり、ガラスのコップで重しをされたり…。

とてもシュールで不思議なお話ですが、孤独だった青年が大切な人を得た喜びが時にユーモアと共に、生き生きと描かれているところが微笑ましいです。

また、宇野亜喜良さんのイラストがお話にぴったりで、遠近感のない夢のようなシュールな情景が、独特のロマンティシズムをたたえながら、繰り広げられます。

哀しかったような気もするけれどもう一度見たい、けれどよく覚えていない上に、決して同じ夢は見ることができない…そんな夢のジレンマのような余韻を味わえる不思議な読後感の1冊です。
どうぞご堪能ください.:*・゜

Information

出版社品切れ または絶版 となっています >2018年5月現在

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