ル・ジャルダン・デ・サヴール 中澤敬二 古くて新しい味
[フランス料理]

ル・ジャルダン・デ・サヴール 中澤敬二 古くて新しい味

シェフ・シリーズ66号
黒部徹 *撮影
中央公論社
1995.7 初版 / 30×21 / 144p
ソフトカバー
[ 商品番号 N゜sf1-66 ]

sorry... sold out

29歳という若さで「イゾルデ」のシェフを任され、1991年からは「ル・ジャルダン・デ・サヴール」(南青山→東銀座)オーナーシェフとしてご活躍の中澤敬二さんによる2册めの「シェフ・シリーズ」です(1册めは、37号「味を記憶する 美味しいヴァリエーションの基本」)。

生まれながら別の食文化を背負った日本人がどうしたらフランス料理の枠から逸脱せず、日本で新しいフランス料理を創造していけるのか…
生まれ育った母国以外の料理を極めようとする料理人が 必ず直面するこの壁を、 “現代フランス料理の原点といわれる古典料理の基礎をひたすら学び、頭の中に叩き込むこと”で乗り越えるべく、 古典の技と基本を大切に、一皿一皿のお料理・素材の本質を探ってらっしゃる 中澤敬二シェフの姿勢が伺える1册です。

ルセットは…
日本人として感覚にしみついた「和」の感覚、素材の扱いから抜け出し、フランス料理へと昇華する試みを、日本の台所でもおなじみの野菜や青背の魚、山菜を例に取り上げた“「和」の感覚から抜け出す試み”、
素材それぞれの本質的な特徴を改めて吟味し、産み出されたルセットが紹介された“素材の本質に近づくほど料理が自然になる”、
お店の名付け親で盟友でもあるミシェル・ブラスさんの野菜の扱いに感銘を受けたことから産み出されたコース料理が紹介された “「植物の魔術師」に導かれた野菜のコース”、
「魚介類のオードヴルにジビエが主菜の二皿コース」「オードヴルがジビエ 魚介を使った主菜の二皿コース」が紹介された “古典料理の核心にふれられる「ジビエ」と魚介の二皿コース”、
他、
“フランス料理の奥深さを感じさせるじゃがいも技術”
“トリュフは香りで合わせる素材を抱擁する”
“故郷への愛着が作る気持ちをかき立てる 信州素材のデザート”
“最高のチョコレート・デザートは最上のチョコレートからしか生まれない”…と、魅力的なカテゴリーで紹介!

また、「古典(クラシック)を読み直す」として、古典料理「若鶏のバスク風」「コック・オー・ヴァン」「舌平目のボンファム」「ブッフ・ブルギニョン」「鴨のオレンジ風味」の“本質的なエッセンス”をそれぞれ抽出して新しい生命を吹き込んだ創作料理が紹介されたコーナー(ルセットはありません)、
「ワインに寄り添う料理」として、ワインと料理考、ロマネ・コンティ、シャトー・ムートン・ロートシルトに合わせるお料理が紹介されたコーナー(ルセットはありません)、
「時間がなくてもパンは焼ける」として、お店のパンについての紹介(レシピ付*発酵はドライイースト、生イースト併用)、
上記の野菜コースでも紹介された盟友「Michel Bras」オーナーシェフであるミッシェル・ブラ(ミシェル・ブラス)氏へのインタビューのコーナーなど、 読みものも充実です!

どうぞご堪能ください.:*・゜

  • 「和」の感覚から抜け出す試み
    • 台所野菜を「惣菜」から脱皮させる
      • 子持ちヤリイカのにんじん詰め バルサミコ酢風味
      • 酸味の効いたオニオン・スープ 鯵のマリネ添え
      • 真鱈のポワレ オニオン・ソース つぶしじゃがいも敷き 乾燥オニオン添え
      • オマール入りほうれん草ボールのゼリー寄せ
      • 長ねぎと赤貝のテリーヌ 酸味の効いたビーツ・クリーム添え etc...
    • 青背の魚は臭みを匂いに変え、外からの香りを重ねる
      • 鯵のポワレ カレー、サフラン風味 りんごとレーズンのリゾット敷き
      • 鰯のパン粉焼き タルタル・ソース
      • 鰯のクネル 生姜風味 ナージュ仕立て
      • 骨つき鯖のロースト サフラン風味オニオン・ソース かぼちゃのニョッキ etc...
    • 山菜は苦みをどこまで抜き、どこまで残すか
      • 山菜のあかざ海老のクリームあえ ミルフィーユ仕立て
      • 山菜と鮑の肝のガレット仕立て つぶし卵添え
      • すずきのポワレ ふきのとうソース わけぎと山ごぼうのフライ添え etc...
  • 素材の本質に近づくほど料理が自然になる
    • 鴨フォワグラのなめらかなテリーヌ りんごのピュレ、デーツのピュレ添え
    • 天然真鯛のポッシェ ベアルネーズ・ソース ゆでたじゃがいも添え
    • 骨つき仔羊ロース肉のロースト 皮つきにんにくと揚げなす添え
    • マルセイユ風すずきの蒸し焼き etc...
  • 「植物の魔術師」に導かれた野菜のコース
    • 信州産野生茸のマリネ コリアンドル風味 干しぶどうと青菜添え
    • キャベツの煮込み 地蛤の燻製風味スープ仕立て カレーの香りのフイヤンティーヌ添え
    • ムッシュ・ミッシェル・ブラのスペシャル 温かい野菜の盛り合わせと市場からの魚のポワレ添え
    • できたて自家製シャーベットの盛り合わせ
    • りんごのコンポート ゼリー添えとかわいいりんごのフランボワーズ・ソース
  • 古典料理の核心にふれられる「ジビエ」と魚介の二皿コース
    • 魚介類のオードヴルにジビエが主菜の二皿コース
      • ★帆立貝のパピヨット トリュフ風味 若い洋ねぎ添え
      • ★野兎のシヴェ
      • ☆地蛤の燻製とかわいい野菜のゼリー寄せ タイム風味
      • ☆えぞ鹿と豚足のちりめんキャベツ煮込み 赤ワインソース
      • ★鰻のミルフィーユ仕立てテリーヌ 赤ヴェルモット酒ソース 豆苗と絹さや添え
      • ★ペルドローのシャルトルーズ
      • ☆牡蠣の温製 パルマンティエ風
      • ☆野鳩のロースト 血のソース 根セロリのピュレ添え
      • etc...
    • オードヴルがジビエ 魚介を使った主菜の二皿コース
      • ★野兎のテリーヌ マンゴーのクーリと赤いフルーツのコンフィ添え
      • ★あんこうのムニエル 焦がしバターソース わらびのソテー添え
      • ☆コルヴェールのバロティーヌ 赤ワインのコンソメ・ゼリーと季節の野菜添え
      • ☆オマールのグリエ コリアンドルとカレー風味のジューとグラタン添え
      • etc...
  • フランス料理の奥深さを感じさせるじゃがいも技術
    • ローストしたじゃがいものマヨネーズあえ 貝類とホタルイカのマリネ、葉玉ねぎ風味
    • じゃがいものコンフィと鴨のコンフィの盛り合わせ
    • じゃがいものソテー オリーブ、ベーコンとソテーした生アンチョビの盛り合わせ
    • インド風じゃがいものガレット サラダとともに
  • トリュフは香りで合わせる素材を抱擁する
    • 子持ちヤリイカの冷製 トリュフのヴィネグレット・ソース
    • トリュフと卵の菓子仕立て ロケット・サラダ添え
    • トリュフの茶碗蒸し
    • フォワグラのキャベツ包み 蕎麦の実入りトリュフ・ソース
    • トリュフと根菜の煮込み 仔牛胸腺肉入り etc...
  • 故郷への愛着が作る気持ちをかき立てる 信州素材のデザート
    • 柿のクリスティーヤンとシャーベット フランボワーズ・ソース
    • 栗のパイ包み焼き あんずのソース チョコレート・アイスクリーム添え
    • 信州ぐるみのサバイヨン・グラッセ キャラメル・ソースとチョコレート・ソース etc...
  • 最高のチョコレート・デザートは最上のチョコレートからしか生まれない
    • チョコレートのメレンゲに絞ったビター・チョコレート・ガナッシュ バニラのシロップとオレンジのアイスクリーム
    • チョコレート・シューのバナナ・クリーム添え ラム酒たっぷりのアイスクリーム、バナナチップ添え
    • チョコレート・クレープのオーモニエール 金柑クリーム入り牛乳のシャーベット添え
    • カカオ風味トリュフの香りのサバイヨン りんごのコンポート敷き etc...
  • 他、基本のレシピ(オマールのコンソメ、シブレット・オイル、コンソメ、鶏のブイヨン、わらびのアク抜き、フォン・ド・ヴォー、クール・ブイヨン、野菜のブイヨン、トリュフのクーリ、ヴィネグレット・ソース、ブーケ・ガルニ、オレンジの粉、栗の渋皮煮、チョコレート・ソース、フィユタージュ、フランボワーズ・ソース、カスタードクリーム、栗のシロップ煮)も参照できます。

The key to the treasure is the treasure

 生まれながら別の食文化を背負った私たち日本人が作り手としてフランス料理に従事するとき、フランス人との感覚の違いが ときに私たちの目前に、大きな壁として立ちふさがることがある。
 新しい料理を産み出す力が個人の創造力に由来するとしたら、フランス人のように考えて 表現可能な感覚を持たぬ私たちは、いかに創造的な料理を思いついたとしても、フランス人から「これはフランス料理ではない」とひとたび否定された途端、フランス料理としての整合性を失ってしまいかねないのである。
(中略)
 それでは、どうやったら フランス料理の枠から逸脱せずに 作ることができるか。 それにはまず、現代フランス料理の原点といわれる古典料理の基礎をひたすら学び、頭の中に叩き込むことである。そして、基本を尊重しながら時代に合わせた現代化を試みるとき、ひとりの料理人としての表現力がはじめて発揮されるのではないだろうか。
 私の尊敬する友人であり、ル・ジャルダン・デ・サヴール――美味しい匂いのする庭という名前を贈ってくれた ミッシェル・ブラさんは、有名な店やシェフのもとで修業した経歴を持たない。フランスの保守本流からはずれた部分から登場し、中央からの注目を集めた料理人である。
 仕事の上で 徹底した自然主義を実践するブラさんは、異端的な料理人であるかのように受け取られているが、私が一緒に働いてみて感じるのは、誰よりも深く古典を勉強し、料理そのものを論理的にとらえていることだ。
 彼の考えていることを理解するにつれ、ときには突飛にも斬新にもうつるブラさんの料理が、実は深い伝統に根ざしていることに気づき、独創性と矛盾せずに正しいバランスで共存していることに感動するのである。
 そう、私が目指したいのもフランス料理の古典を重んじる正統性と、新しい味へと向かう創造性の調和なのである。
 古典料理におけるさまざまな「旧技」を使って「新味」に変える。 古典料理を現代的な形に再生させるためには、ただ古い料理を繰り返すのではなく、基本が教えてくれる本質的なものを正確に把握し、今日的な意味に読み直さなくてはならない。見識と洞察力を必要とする、とても難しい作業である。
 古典と現代の間を行きつ戻りつ、振り子のような永久運動を続けるうちに 旧技と新味がせめぎ合い、やがて自分なりの方向性をさらにはっきり見きわめたいのである。

巻頭のシェフのご挨拶のページより

Information

出版社品切れ または絶版 となっています >2018年4月現在

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