食と暮らしの古本屋 eclipse plus

作家マージェリィ・Ｗ. ビアンコさんが1922年に生み出し、今なお世界中で愛され続けている名作を、酒井駒子さんが自ら抄訳、イラストと共に届けてくれた絵本です.:*・゜

あるクリスマスに、ぼうやに贈られたぬいぐるみのうさぎは、子ども部屋のおもちゃ仲間から、「こころから たいせつに だいじにおもわれた おもちゃは ほんとうのものになる」と教えられて、いつか自分も“ほんもの”になれるのかな、という思いを抱きます。
ふとしたきっかけからぼうやのお気に入りとなり、共に過ごす楽しい日々... “ほんもの”になれた喜び... でも突然、そんな幸せな日々は終わり、ぼろぼろになったぬいぐるみのうさぎは燃やされることになってしまって…！

子ども部屋の妖精の奇跡で、生きている本物の兎になれたビロードのうさぎ、でも、ぬいぐるみのうさぎの本当の望みは、生きて野を駆け巡ることではなくて、ぼうやとずっとずっと一緒にいること…ラストの１枚のイラストから、そんなビロードのうさぎの思いが伝わってくるようで、ただただ切なくなってしまいます.:*・゜

愛されるから“ほんもの”なのではなく、愛する心を持ったから“ほんもの”になれたのでしょうか。
ビロードのうさぎの心に宿った“ほんもの”の愛情に心打たれる不朽の名作です.:*・゜

どうぞハンカチのご用意をお忘れなく…ご堪能ください！

「しーん」
ちょうちょが花を離れる、その瞬間。

「カチッ」
鳩時計が12時を告げる、その直前の針の音と静けさ。

「はっ」
猫がねずみを見つけた時の緊張感、捕えた瞬間。

「ちゃぽん」
紅茶に角砂糖を入れた一瞬、沈んだ角砂糖。

「みつあみちゃん」
紅茶を前に目を閉じた少女、そして………！！！

「しーん」「カチッ」「はっ」「ちゃぽん」「みつあみちゃん」…たった５つの言葉、それぞれに、同じ構図で描かれた連続する３葉の絵が充てられ、“瞬間”が描かれた、歌人の穂村弘さん×イラストレーターの酒井駒子さんによる絵本です。

一見、パラパラ漫画や間違い探しを連想する構成ですが、酒井駒子さんの静謐な絵は、まるで時間や動きから解き放たれているかのように、その一瞬が永遠であることを感じさせてくれる不思議なパラドックスを孕んでいるかのよう。とても美しいです.:*・゜

そして、ドキッとして息をのむような、時間が止まったような衝撃が突きつけられるラスト！
穂村弘さんのアイディアと感性に脱帽です！！

まるで‘アインシュタインの相対性理論’を奇跡的に絵本にしたような、一度読んだら忘れられないユニークで特別な１冊です。
どうぞご堪能ください.:*・゜