The key to the treasure is the treasure
人の生命のゆきつくところは
愛し愛され、一つになることを願い
それをあらわさずにはおられぬ仕組みを
生きるところにあると思います
人間の尊厳も自由も
互いに愛惜せねばならぬ根源も
ここに、見いだされてなりません
これが、スープの湯気の向うに見える実存的使命です。
序文「スープに託す」より
辰巳芳子 *著
小林庸浩 *写真
ルートヴィヒ・ヒルシュフェルトマック *表紙作品
文化出版局
2002年9月初版 / 25.5×20 / 126p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜s3-1-1 ]
「スープの会」というスープ教室も長年続けていらっしゃる辰巳芳子さんが、切なる思いを込めて上梓されたスープの本です。
和の汁もの・おつゆと洋風スープが、基本から系統立て枝分かれ式に整理され、バリエーションのヒントと共に紹介されているのですが、こちら、単なるレシピ本ではなく、なんと言ったらいいのでしょうか…スープの滋養が身体にしみわたるように、辰巳さんの心尽しが、気持ちにしみわたってくるような……読み終わった時に、ほうっと一息、それから、気力が充実してくるような読み心地。
確かに、一般の家庭で、辰巳さんのように素材へのこだわりを貫くことは、経済的にも難しいとは想うのですが、気後れせずにできることからしてみようかという、そんな緩やかな気持ちになれるのは、恐らく、辰巳さんの料理に対する考え方に共感できるということと、あと、言葉の使い方が自在で素敵だということかなと思います。そんなにこだわりが!…厳しいなあ……と思った途端に、例えば、“表面がほほえむ程度の煮え加減”なんて表現があったりするので、ふっとついて行けるのです。
もちろん、紹介されているレシピも、季節感への配慮も素晴らしくとても素敵。ページを辿るたびに、それぞれのレシピごとに素材が一番美味しい季節にワープしたくなります!
いろいろとはっとすることばかりの1册なのですが、“蒸し炒め”と、あと、火かげんについての考え方、‘朝のみそ汁、夕べのみそ汁’の違いについてなど、エッセイも素晴らしい。
お母さま心づくしの“おつゆもの”で守り育てられたという実感、そして、お父さまのご病気に際して、食事そのものが大変な苦労になってしまう時に、嚥下困難にも対応でき栄養のあるスープが、どれだけ心の支えになったかというご経験も、また感得の思いです。
赤ちゃんの離乳食にもなるし、野菜嫌いの子どもへのひと工夫にもなるスープ…詳細に添えられた素材の効能はとにかく有難くて、まさに“いのちを支えるスープ”の所以…。
また、全体を通して感銘を受けたのは、辰巳さんの文章から伝わってくる、素材の特性を熟知することから生まれる自然への畏敬の念と感謝の気持ち!
装幀も、とても素敵な1册です。
人の生命のゆきつくところは
愛し愛され、一つになることを願い
それをあらわさずにはおられぬ仕組みを
生きるところにあると思います
人間の尊厳も自由も
互いに愛惜せねばならぬ根源も
ここに、見いだされてなりません
これが、スープの湯気の向うに見える実存的使命です。
序文「スープに託す」より
作ってみました♪
ただいま流通中です >2018年5月現在
「カフェエイト」さん *著
『VEGE BOOK 3』から…ゴールデンデリシャスと赤ワインのジェラートを作ってみました♪