プルーストの食卓 『失われた時を求めて』の味わい

プルーストの食卓 『失われた時を求めて』の味わい

アンヌ・ボレル *構成*文
アラン・サンドランス *レシピ
柴田都志子 *訳
マルセル・プルースト *引用原文 / 鈴木道彦 *訳
ジャン=ベルナール・ノーダン *写真
宝島社
1993.5 初版 / 27.5×22 / 191p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜sf10-8 ]

sorry... sold out

1991年にシェーヌ社より上梓された 『PROUST, LA CUISINE RETROUVEE』の邦訳版… フランスの作家マルセル・プルースト氏とその作品に“食”の観点から迫った1册で、代表作『失われた時を求めて』の最終章のタイトル「見出された時」に掛けたその原題通り、氏の食卓の風景が鮮明に見出されています。

紅茶に浸してやわらかくなった一切れのプティット・マドレーヌから 幼少期の夏の記憶が呼び醒まされる 冒頭のシーンは、後に、味覚や香りから記憶が思い出されることが“プルースト効果”と呼ばれるようになるほど 有名なシーンですが、『失われた時を求めて』には 他にも“食”にまつわる印象的なシーンがいっぱい!

また、『失われた時を求めて』は自伝的な要素が強い小説だと言われていますが、プルースト氏自身、ホテル・リッツで たびたび 豪華な晩餐会を催していた 大変な美食家であったことを、改めて伺い知ることができます。

こちらの本ではまず、前半約120ページほどに渡る ふんだんなボリュームで、幼年時代から 作品を追っていく形で、食にまつわるシーンの引用と献立、プルースト研究で知られる アンヌ・ボレル氏の解説が愉しめるのですが、女中のフランソワーズによる日々の家庭料理から 社交界のサロンの食卓まで、食を通して一人ひとりの人間を描ききるその鋭敏で的確な観察眼には驚くばかり.*・゜(ちなみに引用は、小説作品はもちろんのこと、書簡集、当時の新聞記事、プルースト家の家政婦による追憶本なども参照されています)

また、こちらの本はビジュアル的にもとても充実していて、プルースト氏自身はもちろん、その一族や小説の登場人物のモデルになった人々の写真、小説を彩った挿絵、イメージをふくらませてくれる同時代の絵画やデッサンなどもふんだんにページを彩っています。

特筆すべきは、お料理や、キッチン、食材、テーブルセッティング etc... 「プルーストの食卓」がイメージされた たくさんの撮り下ろしの写真の瀟洒な美しさ!ページいっぱいに、豪華な美食の世界が次々と拡がっていて、圧巻です.:*・゜

また、後半で、プルースト作品にちりばめられた お料理のレシピの再現に挑むのは、「リュカ・キャルトン」(現在「サンドランス」)グランシェフのアラン・サンドランス氏!下記でほんの一例ですが メニューをご紹介しますので、どうぞご堪能ください.*・゜

他、巻末には「料理一覧・索引」もあり、カバーを取った本体も素敵ですので、どうぞお楽しみに♪

プルースト作品やその時代をこよなく愛する方、お料理好きな方はもちろん、お料理と文学における共通点や 食することと記憶について考えを深めたい方… さまざまに、興味深くお愉しみいただけるような 読みごたえたっぷりの1册となっています.:*・゜

  • 章立て(献立も紹介されていますが、レシピはありません)
    • 幼年時代の味 オートゥイユからイリエへ、イリエからコンブレーへ
      • コンブレーのメニュー
    • バラ色のドレスの婦人 パリのスワン家にて
      • ジルベルト家でのおやつ
    • 軍隊の楽園 オルレアンからドンシエールへ
      • 男同士の会食
    • ヴェルデュラン夫人邸の水曜日 パリ、およびラスプリエール荘にて
      • ヴェルデュラン夫人邸での晩餐会
    • 上流社会 レヴェイヨンからゲルマントへ
      • レヴェイヨンでの午餐会
      • ゲルマント公爵邸での午餐会
    • 海 カブールからバルベックへ
      • ロベール・ド・サン=ルーと共にする晩餐
      • アルベルチーヌとのおやつ
    • パリ 見出された料理
      • プルースト夫妻宅での晩餐会
  • レシピ(お料理が登場する箇所の引用も♪)
    • アントレ
      • ブーシェのレーヌ風
      • マッシュルーム、アスパラガス、アサツキ入りオムレツ
      • サヤインゲンのサラダ
      • 日本風サラダ
      • ゆで卵、トマト、アンチョビ、ツナ入りサラダ
      • チーズのスフレ etc...
    • 魚介類
      • ニジマスのアーモンド風味
      • ヒラメのシードル蒸し
      • ヒメジのグリル
      • カワハゼのフライ
      • コイのトマト煮
      • カレイのグリル、オランデーズ・ソースかけ etc...
    • 肉類
      • 子ヒツジのもも肉 べアルネーズ・ソースかけ
      • 牛肉のゼリー寄せ(ブフ・モード・アン・ジュレ)
      • ヨークハムの蒸し煮
      • 子牛の腎臓 コニャック風味
      • 牛の蒸し煮
      • プチット・マルミット(トリの内臓入りポトフ) etc...
    • 猟獣野鳥と家禽類
      • 野ウサギの赤ワイン煮込み
      • 野ガモのコケモモ風味
      • 若鶏のシャッスール・ソースかけ
      • ヤマウズラのひなのシャンパン風味 etc...
    • デザート
      • イチゴのムース
      • パイナップルとトリュフのサラダ
      • マフィン
      • コーヒー・バヴァロワ
      • クリスマス・プディング
      • アンズのタルトレット
      • ライスのランぺラトリス風
      • プチット・マドレーヌ
      • ネッセルロード風プディング etc...

The key to the treasure is the treasure

知性が過去の名で表現するものは、過去ではない。実は、ある種の民間伝承で、死者の魂に起こるとされているように、私たちの生涯の各瞬間は、消滅すると同時に生まれ替わり、何らかの物体のなかに身を隠すのである。そして、私たちがその物体とめぐり会うことで 解放されないかぎり、各瞬間はそこに捕われている。永久に捕われたままでいるのだ。時間が身を隠している物体に、もしくは感覚的に―というのも、あらゆる物体は人間にとって感覚であるからだが―私たちがけっしてめぐり会わないことも大いにあり得るのである。

『サント=ブーヴに反論する』より、プルースト氏の文章

Information

「お詫びと訂正」紙の内容は、副題の表記についてです(「失なわれた」→「失われた」)

出版社品切れ または絶版 となっています >2018年4月現在

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