バーブシカの宝石

バーブシカの宝石

入江麻木 *著
講談社
1987.8 初版 / 19.5×14 / 264p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜s3-2-6 ]

sorry... sold out

料理研究家・入江麻木さんによる自伝的エッセイ…
1942年、19歳の若さで、ロシア革命で亡命した白系ロシア貴族の末裔であるご主人の元に嫁がれてからの激動の人生が綴られています。

ご主人との出逢い、恋人時代、結婚式、横浜の山手で暮らした新婚時代、義母から受けたレディー教育、実の娘のようにかわいがってくれた義父から教えてもらったお料理、戦時下のパーティーやロシアの人たちのおもてなしの心、ロシア式イースターやクリスマス・新年の占い、義父との別れ、娘さんである美樹さん(ヴェラさん)の誕生、横浜大空襲、野尻湖への疎開と厳しい生活、終戦、義母との別れ、子育て、離婚、そして50代でスタートした料理家人生、お孫さんとのこと etc...

“宝石箱の中で糸が切れてしまったネックレスのように、ひとつひとつがバラバラに輝いて”…思い出のことを、そんな風に表現されている入江さんですが、嬉しかったこと、悲しかったこと、着ていたお洋服のこと、風景... まるで昨日のことのように語られていて、詩のような描写があるかと思えば、お茶目な一面が垣間見えたり…何度読み返しても夢中になってしまいます。

タイトルの“バーブシカ”は、ロシア語でおばあちゃんという意味で、美しく、華やかで、おしゃれで知性的で、家柄が良く、それだけにまた気位も高かったというお義母さまのこと…嫁姑問題もあったりしたものの、自伝のタイトルに掲げるほど、“かけがえのないほど大きな影響を受けた”とおっしゃる通り、まるでお義母さまへのラブレターのような1册でもあります。

つらくても“もう一度だけ、やってみよう”という思いを胸に、激動の時代を生きて、愛して、駆け抜けた入江麻木さん…
読み返していつも思うのは、人生で突然おそいかかってくる試練も、戦争でさえ、心までは奪い取れない、自分の心だけは自分で保ち守り磨くことができるということ.:*・゜

映画を観る時のように時間をたっぷり用意して…
どうぞご堪能ください.:*・゜

The key to the treasure is the treasure

 お義母さんから聞いた話の中で、特に印象に残っていることがあります。
「私も年をとったけれど(といってもまだ五十歳になるかならないかの頃だったと思いますが)、あなたのように若い人は、四十歳になったらどうしようかしら、なんて思うんじゃない?」
 ほんとうにその頃の私は、“三十歳を過ぎたらもう若くはないし、いっそ死んでしまいたいぐらいだわ”と思っていました。義母は続けてこう言いました。
「二十歳より三十歳、四十歳よりは五十歳と、人生には季節季節に花が咲くように、その年ごとの喜びがあるものなのよ」
「そんな時に思い出して、私の言ったことを。“一年で一番きれいな五月はあといくつあるのかしら”と思ったら、そんなにたくさんはないでしょ? きれいな五月は毎年くるんだし、きれいな季節を無駄にしないようにするのは自分の心次第なの。いつも喜びを感じるように自分がしなければ、誰がしてくれるっていうの?」
 私自身が年をとるにつれて、ほんとうに心に深く深くしみ入ってくる素敵な言葉です。

Information

出版社品切れ または絶版 となっています >2018年5月現在

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