食と暮らしの古本屋 eclipse plus

‘わたし’の産まれる前からずっといて、‘わたし’の傍にずっといる、口をきかない人形の‘なおみ’…でも、口はきかなくても、むっつの少女にとって、人形のなおみは生きているお友だち（六歳の少女とほぼ等身大の人形だから、ずっと前はお姉さんだったかもしれないけれど）。
一緒に眠り、絵本を読み、ティータイムを楽しむ。
何を考えているのか、お話はしないけれど、なんとなく分かっている――なおみのことは誰よりも。
ずっとずっとこんな２人だと思っていた。
ある日突然、なおみが病気になって死んでしまうまでは…。

人形の死は、儚い少女時代の終わり。
時間を超越した人形と、日常的な時間を生きる少女の交感の終焉…。

谷川俊太郎さんの心地良いリズムを奏でることばに、神秘性さえ漂わせている沢渡朔さんの写真という、とても贅沢なコラボレーションにより実現した、一瞬一瞬がとても美しく愛おしい写真絵本です。
ラストがまた、母娘代々、読み継いでいきたいと願ってしまうような、しみじみとした余韻を響かせていて……。

こういう絵本が〈こどものとも〉で配本されてしまうというのは、すごいとしか言いようがないですが、お子さんに向けたというよりは、すくすく育っていってしまう我が子との時間を愛おしんで日々過ごしているお母さま向けに創られたという気がします。

大人になってからこそ出逢いたい、内容・ビジュアルともに、ほんとうに素敵な写真絵本です.:*・゜