THE NURSERY “ALICE”

1865年に「Alice」が出版されてから、20年後の日記にキャロル氏が書き記したのは、もっと幼い子どもたちにも、「Alice」を読んでもらいたいという願い!

そんな願いから生まれたのが、「Alice」の“妹”…こちらの「Nursery Alice」です♪

お話は、すっかり書き改められ、14章という物語全体の構成は変わらないまま、長さは約4分の1に。
幼い子どもには難しい言葉遊びや詩が省略される一方で、元のお話にはない雑談や脱線・寄り道が、新たな楽しみとなっています。
まるで、子どもを膝の上にのせて読んであげているかのような、親密感に溢れた語りかけで、この本を創るにあたって、もう嬉しくて楽しくて仕方ない!というキャロル氏の様子が目に浮かぶよう♪

そんな様子は、挿絵に対するキャロル氏の心配りからも観てとれます。
挿絵は、テニエル氏が元の「Alice」の為に描いたものから20葉が選ばれ、少し描き改められ拡大され、彩色されています。
キャロル氏は、まだ字を読むことができない幼い読者にとって、挿絵がとても重要だと考えていたのでしょうね!普通は、子どもに本を読んであげる人がしてあげるような、挿絵を見るための寄り道を、なんとお話の中でしてしまいます。
挿絵が出てくると、まるでその絵を見ている子どもがそこにいるかのように、必ず絵について言及します。作者の特権( ! )で、今お話している人の絵は、もうちょっと後で出てきますよ、なんて教えてあげることも忘れない芸の細かさには、にこにこしてしまいますね♪

そんな寄り道の時に、よく話題に出るのが色のこと。例えば、ウサギが登場した場面では、“ほら、かわいいピンクの目をしているでしょう?”とか、“しゃれた茶いろの上着をきていますね。ポケットから赤いハンカチがちょっとのぞいています。青いネクタイに、黄いろのチョッキ、ウサギくん、なかなかのおめかしではありませんか?”などという具合☆

また、このウサギの登場シーンと、チェシャ猫との遭遇シーンではなんと、ウサギがぶるぶる震えたり、チェシャ猫が消えたりする‘仕掛け’があります!遊び心とちょっとしたイマジネーションで、新たに読者参加型の楽しみを創り出したキャロル氏には、もう読むたびに脱帽です!遊び方については、もちろんキャロル氏がお話の中でこんな風にしてごらんなさいと教えてくれますので、どうぞお楽しみに♪
(なお、挿絵の面白さについては、下記の『子供部屋のアリス』のあとがきに詳しいです。高橋康也氏ならではの思い入れが感じられ、とても興味深くまとまっていますよ☆ )

「Alice」を読んだことがあっても、こちらの「Nursery Alice」はまた、まるで違うお話のような楽しさがあります。
キャロル氏が読者に想定していた0歳~5歳までのお子さんにはもちろんですが、大人だって、いえ、大人の方にこそ、楽しんでいただきたい感じです♪
「Alice」は、かろうじて楽しめたけれど … こちらのウサギ穴は、「Alice」のウサギ穴よりも小さくて、私には落ちることなんて無理なんじゃないかしら…なんて、悩む必要はありません!
いろいろな版がありますので、下記をご参照のうえどうぞお愉しみくださいね♪

THE NURSERY “ALICE”

THE NURSERY “ALICE”

ルイス・キャロル *作
ジョン・テニエル *画
ほるぷ出版 / 復刻 世界の絵本館 オズボーン・コレクション
1981 / 26×20 / 63p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜ef5-13-1-e ]

sorry... sold out

1979年「国際児童年」の年より、ほるぷ出版から刊行された「復刻 世界の絵本館 オズボーン・コレクション」の1册です。

こちらのコレクションは、トロント公共図書館「少年少女の家」が所蔵する本たちの中から、“とくにイギリスの18世紀にはじまって19世紀末までの古典的絵本を中心にしたすぐれた作品34点と付録1組を厳選し、その内容や絵の色調はもとより、判型、装幀などの形体にいたるまでを完全に再現し復刻”したものとのこと…とても豪華な企画です。

こちらの「THE NURSERY “ALICE”」…やはり目を惹くのは、なんといっても表紙ではないでしょうか!
挿絵は、テニエル氏が元の「Alice」の為に描いたものを用いているのですが、表紙、そして裏表紙には、当時人気のあった妖精画家、ガートルード・トムソン嬢の描いたイラストが新しく起用されています。優し気でロマンチックな雰囲気が、「Alice」の“妹”版にぴったりですね♪

ページをめくると、タルト裁判の絵、薄紙、そして化粧扉(タイトル、出版社などが書いてあるページ)、献詩、本文と続きます。巻末には、「AN EASTER GREETING」「CHRISTMAS GREETINGS」を収録。
当時の雰囲気そのままに、どうぞお楽しみください…☆

Information

出版社品切れ または絶版 となっています >2018年6月現在

おとぎの“アリス”

おとぎの“アリス”

ルイス・キャロル *ぶん
ジョン・テニエル *え
たかやまひろし *やく
ほるぷ出版
1986初版・87.2刷 / 26×22 / 66p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜ef5-13-1 ]

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上記でお届けしました「THE NURSERY “ALICE”」の日本語訳です。
薄紙と広告以外は、ほぼキャロル氏が携わった原書通りとなっています。

高山宏さんの訳が、乗っています♪“ごあいさつ”(まえがき)で、ちっちゃな女の子が最後に言う台詞の訳は、特に冴えていますのでお見逃しなく☆
また、カタカナにもルビがふってあるのが珍しく、ちいさな子どもでも楽しめるようにとの配慮が嬉しいところです。

なお、こちら原書通りなので、巻末には、「イースターのあいさつ」と「クリスマスのあいさつ」も収録されています。特に「イースターのあいさつ」は、すばらしく、感動的な文章ですので、どうぞご堪能くださいね…♪

Information

2010年5月に同出版社より、新しい装幀で改訂新版(ほるぷクラシック絵本)が上梓されています

いずれも、出版社品切れ または絶版 となっています >2018年6月現在

電子書籍化もされています

子供部屋のアリス

子供部屋のアリス

ルイス・キャロル *作
ジョン・テニエル *絵
高橋康也・迪 *訳
新書館 / FL 96
1977初版・1980.2刷 / 17×16 / 78p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜ef5-13-3 ]

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こちらのフォアレディース版は、原書の「THE NURSERY “ALICE”」とは、まず版型や装幀がフォアレディース仕様となっているので全く違う趣きで、ちいさな版型で読むのにふさわしいかわいらしい内容にとてもよく合っています。
また、原書の巻末に所収されている 「イースターのあいさつ」と「クリスマスのあいさつ」も省かれていますが、代わりに、ステキに読みごたえある訳者あとがきが!

訳もとてもステキです!
本文の前に掲げられた献詩が、アクロスティックになるように訳されていたり、あと、「まえがき」に見られるキャロル氏の“新しい野心”(!) の辺りの訳などはぜひ、注目していただきたい感じです☆

挿絵は、原書のとおりですが、「Drink me」を飲む前、飲んだ後の挿絵を見開きで見ることができるなど、新たな工夫も♪

それにしても、この本がフォアレディースシリーズに入っているということ自体が、もう嬉しくなってしまいますね!

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出版社品切れ または絶版 となっています >2018年6月現在

子供部屋のアリス

子供部屋のアリス

ルイス・キャロル *作
ジョン・テニエル *絵
高橋康也・迪 *訳
宇野亜喜良 *装幀
新書館
1987年5月初版 / 22×16 / 114p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜ef5-13-2 ]

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上記でご紹介しましたフォアレディースシリーズ版「子供部屋のアリス」の改訂版です。

フォアレディースシリーズ版とは、まず装幀と版型が違っています。
訳も直されていて、オノマトペが増え、よりくだけた感じで生き生きとしたリズムが魅力!

挿絵もかなり変わっています。
“妹”版「THE NURSERY “ALICE”」の挿絵だけではなく、元のお姉さん「Alice」からのモノクロペン画の挿絵も合わせて、ページを彩る趣向になっていて…キャロル氏のこだわりを考えると邪道かなとも思いますが( ! )、欄外に、お話で話題になっている登場人物が出てくる挿絵のページを教えてくれる注があったり、カラーページは普通のページとは違う上質の紙に印刷されていたりと、さまざまな工夫と配慮が!
また、ページ数で言うと圧倒的に、こちらの方が挿絵を多く楽しめますので、やっぱり読者には嬉しい試みかもしれません♪

本の構成などは、概ね、フォアレディースシリーズ版と一緒です(「あとがき」も同じ)。

なお、こちらは、装幀が宇野亜喜良さんということで、同じく宇野さんが装幀を手掛けたアーサー・ラッカム版のお姉さん「Alice」と合わせて本棚に並べるのも素敵かと思います。版型や仕様も同じですし、パステルカラーの感じも同じで、「姉妹」という雰囲気が漂っていますので…☆

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ただいま流通中です >2018年6月現在

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