マドゥモァゼル・ルウルウ 薔薇十字社版

マドゥモァゼル・ルウルウ 薔薇十字社版

ジィップ *作
森茉莉 *訳
堀内誠一 *装釘
薔薇十字社
1973.2 初版 / 函20×13.5 本体19.5×13.5 / 228p
ソフトカバー(函は厚紙です)
[ 商品番号 N゜ef22-19 ]

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かなり長くなってしまいますが、まずは “ママゼル ルウルウ”嬢とお近づきになっていただきたいので、ご紹介させていただきますね。

“十四歳と六ヶ月。 痩せていて、粗末な着物を着、妙な格好をしている。魅惑的な皮膚の色。桃花心木(マホガニイ)色を帯びたブロンドの髪の毛。黄色のはいった緑色の眼。大きすぎる口。子犬の歯のような歯。高慢な鼻。非常に小さく薔薇色で、くるりと巻いた耳。賢くて、善良で、恐るべく躾が悪い。絶えずといっていいほど、我慢のならぬことをしでかす。周囲から無理やりに押しつけられている勉強を大変に厭がっている。背負わされた講義、宿題、復習、講話、などを厭いやっと我慢してやっている。 現代の教育はなんの役にも立たない「ぼろっ屑」だわ、と常に公言している。 ファラオン(古代エジプト王の称)のところで見聞きすることよりも、母親や叔母達が集まってなにかしているちょっとした間に起る色いろな出来事を覚えたほうがこの娘にはずっと有益で、もっとおもしろく感じられるだろう。蛇のように怠け者だが、勉強をしなくても色いろなことを会得する天禀の才能をもっている。ときによるとやりそこないもするが、自分の覚えた学問を試してみるのが好きで、機会のある毎にやってみる。 そのときには父母が厭な顔をしてもびくともしない。ルウルウは父母を尊敬しているが、彼等でもまちがったことをしたときは罰したほうがいいと思っている。 非常に無邪気で、恋というものを その言葉の現わす ほんとうの意味では知らないが、しかし それについて 自分の想像の上では、動かしがたい 可愛らしい意見をもっている。極デリカな問題になにも知らないで口を挟む。そうして時どき聞き手を驚倒させるようなことをいう。いったいに動物に気狂いだが、殊にプゥロという灰色の小馬、ちょっとの間も側を離れない トックというチョコレェト色の猟犬、乗合馬車の溜りで拾った、デュシというオレンジ色の大きな猫には大変だ。 リキキという名のほうがよく知られているアンリという八歳の弟と、姉さんのディアァヌを非常に愛している。”

訳者の森茉莉さんは、この本と神田の古本屋で出逢い一目惚れされたそう、早速きちんと訳して1933年に自費出版されます。
19世紀の終わり頃に、数作品を遺した作者のジィップさんは、大衆的な作家としてほんの少し名を残しているようですが、人柄それから家柄など、さきほど詳しく引用したルウルウ嬢と とても似ていて、茉莉さんは “ルウルウはジィップそれ自身のようです” と語ってらっしゃるほどです (さきほどの引用には出てきませんが、ルウルウもジィップさんと同じく伯爵令嬢です)。

また、茉莉さんはこの作品に…というよりルウルウに心酔されていたよう…
“わたしはジィップの書かなかった色いろの場面のルウルウをはっきりと見て微笑み、おかしがりました。ルウルウはほんとうにいる、わたしの大好きな少女です”とも語ってらっしゃいます。

お話は、エピソードごとに戯曲(シナリオ)形式で描かれ、やや辛辣とも言えるコメディータッチです。
とにかくルウルウ嬢の機転と当意即妙に富んだ言動が楽しく、また、登場人物がそれぞれ心の中で思っていることが (ひとりごとで) として、面白可笑しく描写されているところもくすくす笑えます。
ルウルウは、おしゃまで 口が達者で、人を見抜く才能があって、そのくせ秘かに恋心を抱いている 歳のうんと離れたムシュ・モントルイユのことになると、お姉さんにからかわれるほどかわいらしくて!

さきほどの引用で、ルウルウ嬢と以前からの知り合いのような気がした方は、ぜひご一読をお薦めしたいです♪真直ぐな気持ちになりたい時、愉快な気持ちになりたい時などにもお薦めです。
ルウルウ嬢の言葉を借りると、この本は “すてきだな、とにかく!” な1册なのです。

なお この本は、後に出帆新社から、また筑摩書房の『森茉莉全集』や河出書房新社などからも刊行されていますが、こちらは、堀内誠一さん装釘の「薔薇十字社」版です.:*・゜

函入りで、本体は味のある紙で装されたフランス装.:*・゜
ページの背景に薄紫色で模様が入っていたり、見返しに影絵が描かれていたりと、端正で美しい意匠ですが、タイトルの周りには小さくハートマークがあしらわれていたりして、かわいらしいです。

どうぞご堪能ください.:*・゜

  • 目次です♪
  • 序 与謝野晶子 / 訳者の言葉
  • ルウルウと政治
  • プチ・パレェにおけるルウルウ
  • 道徳家のルウルウ
  • 示威運動を見るルウルウ
  • 森(ボワ)へ行ったルウルウ
  • ルウルウの最初のフリルト
  • 園遊会(ガアデン・パアテイ)に行ったルウルウ
  • 舞踏会(バル)に行ったルウルウ
  • 郊外に行ったルウルウ
  • あとがき
マドゥモァゼル・ルウルウ 薔薇十字社版
本体の表紙です♪

マドゥモァゼル・ルウルウ 出帆新社版

マドゥモァゼル・ルウルウ 出帆新社版

ジィップ *作
森茉莉 *訳
榎本香菜子 *装釘
出帆新社
1980.再版 / 20×14 / 225p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜ef22-19-1 ]

sorry... sold out

上記でご紹介した薔薇十字社版とは、また違った趣きが楽しめる出帆新社版です。

こちらの装幀は、パステルグリーンを背景に、オレンジで縁取りされた 黄色い猫のシルエットが印象的!また、猫がちょこんと座っている葡萄の木のオーキッドピンクは、カバーをはずした本体と同じ色で呼応していて、洒落ています!(本を読んでいる時に、ページの端からちらっとピンク色が見える感じが、もうたまらない可愛らしさです!)

内容は、文章的には薔薇十字社版と全く同じとなっていて、与謝野晶子さんの「序」、訳者*森茉莉さんの「言葉」と「あとがき」が収められています。

ページは さすがに薔薇十字社版ほど凝っていなくて普通の無地なのですが、こちらの本の創りで素敵なところは、化粧扉を透かして、ショッキングピンク色のセロハンが配してあるところ♪
表紙のパステル調から一転、本のページを辿る前の ドキドキしている気持ちを、さらに高めてくれているようで、ルウルウに逢う前の通過儀礼として、この上なくぴったりです。

他、薔薇十字社版では、ジィップさんの写真が、本文に入る前に配されていたのが、こちらでは、あとがきの中に挿入されています(上質の厚い紙でちょっと豪華です!)。

シルエットで魅せているところや、蔦のからまる感じ、三角の波形のデザインなど、堀内誠一さんの装幀が意識され踏襲されているような雰囲気も漂いつつ、でもまた新しい視点でルウルウを彩っている、可愛らしい1册となっています。
どうぞご堪能ください.:*・゜

Information

2009年12月に河出書房新社より、宇野亜喜良さん挿画、名久井直子さん装丁で新たな版が上梓されましたが、いずれも出版社品切れ または絶版 となっています >2018年6月現在

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