食と暮らしの古本屋 eclipse plus

絵は、ちいさな子どもが描いたみたい。
鉛筆と、水彩と、クレヨンで、思いっきり思いっきり表現している絵。
なにか思いついたらすぐ、余白を見つけて書き足したような！
お話のナレーションは鉛筆で手書き、間違ったところはぐしゃぐしゃってして、横に正しく書いてある。

お話は、ぼくときみとトマトとレモンが「おはよう」って起きてきて、スープ号に乗り込み、おいしいスープをつくり、みんなに分けてあげる…休憩の時に、テレビで非日常が入り込んでくる他は、多分、いつも通りの４人。
ぼくときみとトマトとレモンは、きっといつもこんな日々を送っているんだろうな、と想える。
４人の周りには、いつも幸せな色、きれいな色.:*・゜

トムズボックス発行の小冊子形式のちいさな絵本です。
恐らく、大きな流通には乗らないけれど、でもそれだからこそすごい実験的な試みがいっぱいで、いつもの荒井良二さんの本以上に、自由で、自由で、楽しいです♪（…と以前書いていましたが、この自由なスタイルがその後の荒井良二さんの絵本には続々と登場して、私たちを楽しませてくれています！）

無造作だけど、きっとここにしかあり得ない自在な線は見ていてとても気持ちが良く、また、鳥の鳴き声が書き込んであったり、おなべには「スープなべおおきい」なんて書いてあったり、火の近くには「がんばれ」なんて書いてあったりもして、じっくりと眺めているととっても楽しい♪
ナレーションはリフレインのリズムがとっても心地良く、声に出して読みたくなるような感じです…☆

読んでいる途中で、美味しそうなスープの香りに誘われてちょっとお腹も空いてきて（ ! ）、読み終わった後は、なんとも言えない、暖かいような淋しいような…不思議な余韻が残る絵本。
ちいさな秘密を分けてもらったような本の佇まいも相まって、特別な１册となっていますよ。