ルリユールおじさん

ルリユールおじさん

いせひでこ *作
岡本明 *装幀
理論社
2006初版・同年3刷 / 20.5×28 / 56p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜e1-1-1 ]

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“こわれた本はどこへもっていけばいいの?”

パリの街に、1人の少女にとって忘れられない1日となる特別な朝がきます。
ソフィーは植物を愛する女の子、きっとその日も朝から、お気に入りの植物図鑑を携えて、テラスの植物を観察しようと張り切っていたのでしょう…けれど、図鑑がバラバラにこわれてしまって…。街に出たソフィーは、“ルリユール”のところに行ってごらんと教えてもらいます。

…“ルリユールって、本のおいしゃさんみたいな人のこと?”

ルリユールは、フランスで伝統的に受け継がれてきた、手仕事での「製本・装幀」のこと。
400年以上前から続いてきた伝統工芸ですが、製本の60工程すべてを手仕事で出来る職人は、パリでもひと桁になっているとのことです。

この絵本は、いせひでこさんが、“「書物」という文化を未来に向けてつなげようとする、最後のアルチザンの強烈な矜持と情熱”から成る手仕事のひとつひとつを、パリにアパートを借り工房に通いつめることでスケッチされたことから生まれた、素敵な1册です。

お話も素敵なのですが、また画が素晴らしいです.:*・゜
その空気までもが伝わってくるようなパリの街並、全ての動作がこれまでの暮らしの積み重ねを想わせる重みのあるおじさんと、好奇心いっぱいに動く生き生きとした女の子の対比。
でも、どこがどうというよりも、全体を通して、なんだか1本の上質な短編映画を観終わったような読み心地で、しかもこちらは絵本なので、好きなシーンをぱらぱらと眺め返すことができるところが嬉しいです…☆

製本の工程も、図解のように紹介してくれる下りがあって、本好きには嬉しいところ。背に丸みがついた本は、めくりやすいようにという配慮だったんだなとか、背に貼ってあるあの網状の布はモスリンだったんだな、など発見がありました。

本屋さんに行けば、いくらでも新しい本はあるけれど、この本とずっと一緒にいたい…そんなソフィーの思いから導かれた素敵な出逢いは「かけがえのないもの」を大切にすればするだけ人生というのは深く豊かになるものだなという、当たり前だけれど普段改めて思い直すことのないことを、改めて気づかせてくれたような感じがします。

Information

2011年に講談社より再販され、ただいま流通中です >2018年6月現在

講談社出版文化賞絵本賞受賞作品です

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