季節を料理する
一流の料理研究家たちが愛した幻の名著『百合さまの本』の復刊!
中江百合 *著
阿川弘之 *序
中江昭男 *カバー*章扉絵
グラフ社
平成15年初版・16年2刷 / 19.5×13.5 / 300p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜s4-9 ]
sorry... sold out
上梓されてから半世紀を経た今も、料理を愛する人々に“百合さまの本”と呼ばれ、代々語り受け継がれている中江百合さんの家庭料理の御本。
中江百合さんは、素封家に嫁ぎお子さんを育てながら、芸術家のパトロンとしても名を遺していらっしゃいますが、一方で、お料理の探究に並々ならぬ熱意を以て取り組まれ、後にお料理教室も開催…料理研究家の先駆けとして知られています。
お料理の探究ぶりは数々の伝説となっていますが、一流の料理人を住込みで招き特訓を受けるほど!
こちらの序文にも、プロの板前さんに教えられたことを、家庭用にその通りにする必要があるかどうか長年研究して“最も家庭用として適している”ようにまとめたとあり、なんとも有難い限りの1册.:*・゜
春夏秋冬の食材の解説や取り扱い方・利用法・美味しいいただき方を始めとして、四季それぞれの野菜料理/魚料理/一品料理、季なし一品料理、酒の肴、漬けもの、野草料理、十二か月・各月各一例の献立や、子ども向きの年中行事の献立(お正月/桃の節句/端午の節句/お盆/クリスマス)など お料理の作り方はもちろん、日本料理の基本(計量のこと/料理道具/調味の基本/合わせ調味料/薬味/つま/煮もの/盛りつけ/配膳)、料理のこつ(乾物のもどし方/冷凍魚のもどし方/塩ものの塩出し法/精進揚げの注意/料理のこつ/料理の名称)、野菜の知識/旬一覧表/切り方、魚の知識/旬一覧表/おろし方/調理法、巻末には「いの一番、料理は親切」で始まるユニークな「料理いろはかるた」も♪
食材の取り扱い方、美味しいいただき方、献立の組み方、料理への臨み方…全てのページが懇切丁寧なお料理指南に満ちていて、ページを辿っていると、まるで中江百合さんのお料理教室に通わせていただいているよう!
でも、中江百合さんはおっしゃいます…お料理は口にも筆にも表し尽くせないものと…。
当り前のことですが、季節によって、また物によって、食材には1つとして同じものはなく、水分、甘み、味の効き加減なども変わってしまうので、家庭料理として安定したなじみのある味に落ち着かせていくことがどれだけ大変か…でも、そんな“かげん”をできる限り伝えてくれ、また、お料理の際に予想できる限りの補足やバリエーションも加えられていて、もちろん家庭料理なので、質のあまりよくない食材だった場合のあしらい方まで言及が!
写真は一切なく、分量もあるもの・ないものいろいろですが、到底見た目の華やかさや数字では表しきれないたくさんの知恵と心のまめやかさを授けてくれる本当に有難い1册です♪
あとがきに寄せられたお嫁さんの文章に、この本が長い時間をかけて 書かれていたこと、そして、中江百合さんが“料理の本を書くことを一生の使命”とされていたことが綴られています。
“一家庭婦人”として類まれな料理研究を経て上梓された、生涯に1册の御本に込められた筋の通った気迫と気概…これまで5社から刊行され、現在残念ながらいずれも入手が難しくなってしまっていますが、ぜひこれからも語り継いでいきたい素晴らしい1册となっています。どうぞご堪能ください.:*・゜
- 紹介されているお料理の一例
- 魚のけんちん蒸し
- さざえのつぼ焼き
- 豆腐の木の芽田楽
- さつき汁
- 若たけ煮
- 鶏肉の蒸しもの
- あわび大洗煮
- きゅうりもみ
- 鏡なす こまごまみょうが 溶き辛子
- 滝川豆腐
- さばみそ煮
- すまし汁 まつたけ むらくものり
- 磯辺芋のすまし汁
- れんこん油煮
- 柿ふろふき
- すまし汁 鴨くずたたき
- さつま汁
- 魚の煮こごり
- たこの柔らか煮
- 袋かき つと豆腐 吸いもの
- ほうれん草 磯巻き
- みじん豆腐 すまし汁
- うに おぼろ豆腐
- 鶏赤卵の春霞
- 煮しめ東京風
- 豆腐の丸
- 寿司
- とろろ芋
- ぬかみそ漬け
- 甘酢漬け
- 柿なます
- ごった煮
- こはだ卵の花寿司
- 椀盛りかき豆腐
- くわいと長芋の挽き茶入りきんとん
- 芽かんぞ あおやぎ 黄身酢あえ
- しらうおと皮ごぼう 炊き合わせ
- たけのこのかつお炊き
- たいの潮汁
- 夏みかん酢のちらし寿司
- 柳川鍋
- たちうお八幡巻き
- 白酢あえ
- ごま豆腐
- 乾物炊き合わせ
- まぐろきじ焼き
- 大豆煮豆 etc...
The key to the treasure is the treasure
私はこの料理の本で、純粋の日本料理を扱いました。古くから日本に伝わってきた、私のおじいさんおばあさんもそれを食べてきた、そのおじいさんおばあさんのまたおじいさんおばあさんもそれを食べてきたというようなものの中から、こんなおいしい料理、こんな嬉しい料理、こんなありがたい料理と思うようなものをなるべく落さないようにと思って拾い上げたつもりです。
(中略)
もちろん家庭の食事でご飯にビーフステーキを取り合わせようと、バタを塗ったパンにのりをはさんで食べようと自由ですけれど、そうした時代であればあるほど、昔から伝えられた日本古来のいかにも日本的な、また日本ならではと思う大事な味が損なわれていったり、忘れられてゆくのを悲しみ、むしろ怒りさえして、どうかして若い方々にも日本の美を料理のうえからも改めて認識してほしいと願う心からこの本を書き、献立を作りました。これも古稀に近い媼のノスタルジアかもしれません。
Information
昭和34年(1959年)に東京創元社より『日本料理十二か月』として上梓されて以来、
昭和41年(1966年)にこどもの部屋社より『日本料理の本』、
昭和55年(1980年)にクイックフォックス社より『季節を料理する』、
昭和57年(1982年)に旺文社より前タイトルで文庫化、
そして平成15年(2003年)に上記でご紹介の本と、これまで5社より出版されています。
いずれも出版社品切れ または絶版 となっています >2018年5月現在