赤ずきん ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ

赤ずきん ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ

シャルル・ペロー *原作
サラ・ムーン *写真
定松正 *訳
西村書店
1989年12月初版 / 22.5×16 / 40p
ハードカバー
[ 商品番号 N゜ef9-12 ]

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グリム童話など、これまで読み継がれてきた20の物語を新たな構成で捉え直したワンス・アポンナ・タイム・シリーズ。
こちらは20册中、2册含まれている写真絵本のうちの1册です。

庄司薫さんの小説『赤頭巾ちゃん気をつけて』の中で、作品の核ともなっている印象的なシーンに、街をさまよう主人公・薫くんが、ふと出逢った少女に「赤頭巾ちゃん」の絵本を選んであげるというところがあります。
選びながら薫くんは思います。
“赤頭巾ちゃんなんて誰でも知っている話だけれど、ものによってずいぶんちがっているのだ。たとえばグリムでは、狼に食べられた赤頭巾ちゃんとおばあさんは猟師とか木こりに助けられるのだが、ペローでは大てい食べられてしまったままで終ってしまう。それから狼に出会って怖がってふるえる赤頭巾ちゃんとか、狼に脅かされておばあさんちのドアを叩く合図を教えてしまう赤頭巾ちゃんとか、「見知らぬ人を信じちゃいけません」とか「道草しちゃいけません」なんていう教訓をやたらと繰返して罪の意識に悩む赤頭巾ちゃんとか、いろいろ変なのもあるのだ。そしてぼくは(詳しく話したらきりがないのでやめるけれど)、このちっちゃな道草好きのやさしい女の子に、素敵な赤頭巾ちゃんのお話を選んでやりたかった。見知らぬ狼さんを見てもニコニコしてこんにちはなんて言ったり、森の中に咲いているきれいなお花を見てついおばあさんのために摘んでってあげようと道草したり、そして狼に食べられてもあとでおなかからニコニコして出てくる可愛い素直な赤頭巾ちゃんを。”

サラ・ムーンさんによるこの写真絵本は、原作がシャルル・ペロー版、ビジュアルはモノクロームの写真で構成されていて、どんなに間違っても薫くんが少女に選んであげることはないであろう、かわいらしい“赤頭巾ちゃん”ではない、まさしくタイトル通り“赤ずきん”な大人向け( ! )。

1984年のボローニャ児童図書展グラフィック部門で大賞を受賞していますが、その選考に大きく頷いてしまう素晴らしい出来映えです!

まず一番画期的なのは、舞台となっている背景が都会的な街であり、オオカミはなんと車!
また、ナレーションと共に時計の写真を添えてページを辿るごとに針を進ませ、赤ずきんがオオカミに食べられてしまうまでのタイムリミットを表現して緊迫感を演出したりと、こういう着想は本当にもうすごいとしか言い様がありません。

大きな割合を占める影がひときわ美しいモノクロームの写真も素晴らしく、残酷なペロー版「赤ずきん」の表現手段として、もうこれ以外・これ以上のものがあるだろうかと思ってしまうような、ぎりぎりのテンションで創られています。
どうぞごゆっくりご堪能くださいね…☆

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