食と暮らしの古本屋 eclipse plus

1930年代より新聞社のパリ特派員として渡仏、長い海外生活を経て翻訳者・評論家として数々の本を上梓された松尾邦之助さんによる女性向け・フランスの女流作家案内書です。

思想、哲学など人生観、世界観にまで踏み込んだ紹介、さらにシュールレアリスト達との交流など、氏自身の同時代的体験が散りばめられているところなど、読みごたえがあります。

大きく取り上げられているのは、コレット、フランソワーズ・サガン、シモンヌ・ド・ボーヴォワール、シモンヌ・ヴェーユ、エルザ・トリオレ。
他、１７～１９世紀までの女流文学史としては、ド・セヴィニェ夫人、ド・スタール夫人、ジョルジュ・サンドなど。
また、２０世紀に入ってからは、アンナ・ド・ノアイユ、ジェラール・ドゥヴィル夫人、マリイ・ローランサン、キク・ヤマタなどが紹介されています。

巻末には、「フランス女性の特質」を論じた文章や、伊藤野枝、樋口一葉、清少納言、林芙美子、宮本百合子、佐多稲子、岡本かの子などの「日本の女流作家との比較」の章も。

歯に衣着せぬとはこの事…！？贔屓の作家は思いきり褒める、逆はけなすなどかなり率直に書かれている為、公平とは言えないところは多分にあるかと思いますが全体的には読み易いですし、思想・哲学的思考が熱かった時代の息吹きのようなものが感じられるという点でお薦めです。

シルバーの装幀、松本はるみさんの挿し絵も美しい１册☆
（上記紹介文中の人名・敬称略、カタカナ表記は原文ママです）