食と暮らしの古本屋 eclipse plus

「こどものとも」は、1956年に福音館書店より創刊された月刊の物語絵本です。
月刊絵本とは、学齢期前後の幼児期を主な対象として創られ、書店を通してではなく幼稚園や家庭に直接配本するスタイル、また、簡易な装幀により実現している安価さなど、月刊絵雑誌と共に諸外国にはあまり類例のない、日本独特の出版文化。
20世紀初頭から、もうその萌芽は見られたようですが、福音館書店の「こどものとも」創刊は、月刊絵本の歴史に、また、子どもの本の歴史に、大きな転機をもたらすことになります。

「こどものとも」は、毎号、ひとつのお話にひとりの画家が通して絵を描くという、月刊絵本としては斬新な形態、また、それまで絵本の仕事をしたことのないアーティストを画家として起用するなど、思い切った編集方針が採られました。

画家として起用されたアーティストは、日本画、洋画、水彩画、版画など絵画以外にも、彫刻、商業美術、漫画など幅広い分野からで、「こどものとも」で絵本を描いたことがきっかけになって、今では絵本作家として認識されている方々も少なくありません。

この展覧会は、「こどものとも」が1997年秋で創刊以来500号を数えたことを機に、「こどものとも」のために描かれた絵本原画４７タイトル・約370点を通して、“戦後の絵本の美術史の一端をたどるとともに、現代の美術の一領域としての絵本原画の世界を紹介しようとするもの”とのこと。

現在ハードカバーの傑作集などで入手できるタイトルを挙げてみると…

赤羽末吉『だいくとおにろく』、秋野亥左牟『プンクマインチャ』、安野光雅『ふしぎなえ』、井上洋介『まがればまがりみち』、太田大八『だいちゃんとうみ』、小野かおる『われたたまご』、加古里子『だるまちゃんとかみなりちゃん』、梶山俊夫『ごろはちだいみょうじん』、佐々木マキ『やっぱりおおかみ』、佐藤忠良『おおきなかぶ』、さとうわきこ『やまのぼり』、スズキコージ『ガラスめだまときんのつののヤギ』、瀬川康男『ばけくらべ』、田島征三『だいふくもち』、たむらしげる『ロボットのくにＳＯＳ』、長新太『ごろごろにゃーん』、中谷千代子『ジオジオのかんむり』、西村繁男『やこうれっしゃ』、林明子『あさえとちいさいいもうと』、土方久功『ぶたぶたくんのおかいもの』、堀内誠一『たろうのおでかけ』、丸木俊『１２のつきのおくりもの』、茂田井武『セロひきのゴーシュ』、元永定正『カニツンツン』、山田三郎『三びきのこぶた』、山本忠敬 『のろまなローラー』、山脇百合子『ぐりとぐら』、Ａ・ラマチャンドラン『おひさまをほしがったハヌマン』、和田誠『あな』 etc...

…懐かしいタイトル、きっと思い出されるのではないでしょうか？
現在入手が難しいタイトルの原画も多数、紹介されています。
お手持ちの絵本と合わせて、どうぞお楽しみ下さいね。

• 目次
  • 「こどものとも」の原画展に寄せて
    • …Dr. バーバラ・シャリオット　（英語の原文あり）
  • 私たちの友だち「こどものとも」　
    • …蔡皋　（英語の原文あり）
  • ［異文化との出会い　子どもたちへの贈りもの］
    • …ジュヌビエーブ・パット　（英語の原文あり：別冊子）
  • 相互理解への道　日本とアメリカをつなぐ絵本たち
    • …Dr. シビル・Ａ・ヤグッシュ　（英語の原文あり）
  • 月刊絵本の歴史と「こどものとも」
    • …松居直　（英語の原文あり）
  • 美術としての絵本、物語る絵の復活
    • …松本猛　（英語の原文あり）
  • 「こどものとも」のイラストレーション
    • …針生一郎　（英語の原文あり）
  • 図版（作家略歴・資料）
  • 絵本文化における原画 　
    • …松居直　（英語の原文あり）
  • 「絵本原画の世界」展・ノート
    • …原田敦子　（英語の原文あり）
  • 「こどものとも」１号～５００号一覧
  • 作品目録

• 展覧会の巡回　宮城県美術館⇒兵庫県立近代美術館