食と暮らしの古本屋 eclipse plus

読者から投稿された詩やイラストを寺山修司さんが選考し、テーマ別に紹介して本にまとめたシリーズです。

おそらく投稿していた少女たちが読みふけっていたと思われる「寺山修司抒情シリーズ」の影響を多分に受けている作風やモチーフはご愛嬌☆
ひらがなとカタカナの多用による70年代っぽいセンチメンタルで乙女ちっくな表現や、‘少女っぽい’思考から紡ぎ出される新鮮な言葉たち、そして掲載作品のバラエティーは、ある意味とても貴重です。

本の創りも楽しく、寺山修司さんによる遊び心たっぷりのエピグラフや、各コーナーの洒落た紹介文、また、雑誌「それいゆ」に見られるような小冊子がページに挿まれていたり、注目の作品が掲載されているページにはカラーの紙が使われていたりします☆

このシリーズが生まれたきっかけは、なんだったのか…。
いろんなことが考えられると思いますが、私は、寺山修司さんは「少女」であることを１つの才能と考えていたからでは…と思うのです。
というのも、ここ最近また久しぶりに、以前特集した雑誌「ペーパームーン」を眺めていたのですが、いかに「あなたの詩集」で見かける名前が多いかに気づき、あらためて寺山氏と投稿者との精神的に近しい（お兄さん―妹）のような不思議な関係と、寺山氏が歳若い才能に向ける一種独特な感性を興味深く想い直していたからです。

下記でのご紹介にあたっては、紹介文の最後に詩を１つ、作風が偏ることのないように選んで、なるべく掲載させていただきました。また、第２詩集から巻頭を飾っている寺山修司氏による素敵なエピグラフもご紹介しています♪

少女がお気に入りのお菓子の缶や函に、自分の大好きなアクセサリーをしまった宝石箱のような本たち…きらきらした感性を、どうぞお楽しみください！

フォアレディース*「あなたの詩集」シリーズの第１詩集です。

一般から寄稿された作品の中から、“丁度「バラ園」の園丁のよう”に寺山修司氏により剪定された、うっとりノスタルジックな詩や物語たち…少女の胸に去来するさまざまな想い、感傷、憧れ～ ふっと過ぎ去ってしまう儚い瞬間が咲きみだれ、あえかな芳香を漂わせています。

［あどけない恋の詩］［バラの花で書いた物語］［小詩集］［メルヘンジャーニー］、第１詩集ということで特に選りすぐられたものなのか…他のあなたの詩集シリーズより完成度が高い作品が多く見受けられるように感じられます。

そしてそんな選りすぐりの中でも、やはり一番のお薦めどころは、期待の大型新人の風格たっぷりという感じで取り上げられている伊東杏里さんの作品たち。まずは初めてお目見えした「杏里と巴羅―ふたりの船」…“彼女たちはじぶんたちだけの世界をもってるので”特別にうすむらさき色のページに載っているという趣向が嬉しいところ。ふたりの喫茶店「地獄の天使」の紹介、あんりとぱうろのすきなもの・きらいなもの、あるお休みの日の過ごし方などが載っています♪

他、小説として、甘い匂いと少年の狂気、金色の細い旋律がぴんとはりめぐらされた「糸杉の五月」、伊東杏里さんのいろんなお気に入りを並べた「９９粒のなみだ」（大手拓次さんの「あをい馬」(!!) や、「サロメ」からの抜粋、ワインゼリィの作り方などなど）。

また、かわいげな映画のスチール写真や、宇野亜喜良さんのイラストがふんだんにちりばめられているなど、ビジュアル的にも豪華で素敵な１册となっています☆

• 半分愛してください
• のこりの半分で
• だまって海を見ていたいのです

• 半分愛してください
• のこりの半分で
• 人生を考えてみたいのです

…装幀と同じく落ち着いた、こんなしっとりしたエピグラフが掲げられている「あなたの詩集２」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［恋の詩がよみたい］、［お菓子の魔女たち］、［物語と詩　メルヘン仮面舞踏会］、［季節館］、［あなたのための魔女入門］、それから１人の作品をピックアップした［小川薫の「鏡の家」］、３人の作品から成る［物語集　三羽のかもめ］…他の「あなたの詩集」に比べ、物語の充実度の高さが、この本の特色であり楽しいところ！

投稿イラストと共にページに添えられた、宇野亜喜良さんチックな藤田寧子さんのイラストも素敵です。

• ハタチになる秋

• 白い花を見ていると
• 秋に生まれた
• ということが
• たまらなく嬉しい

• 秋の尊さは
• 静かな雨と白い花だ
• そして
• 流れない雲だ

• いつやんだのかわからない
• 秋の雨
• お前のように　静かに生きたい

• 和田潤子

• まえがき　１

• あの広い空の片隅で
• きっと誰かが星をみがいているにちがいありません
• そうでなければ
• 星があんなに光っているわけがない

• まえがき　２

• この本で紹介する女の子たちも
• 人知れず　こっそりと星をみがいている人たちです
• ことばの星　字の星　真実の星　うその星
• 星はみがけば
• 詩になります

• まえがき　３

• 迷い子の星は
• いつも空をさがしています
• この本は孤独なあなたのための
• 天文学入門の詩集です

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集３」です。

‘野原へ出てひなげしの花を摘むように’寺山修司さんによって束ねられた詩たちは、［疑問符］［まだ魔女になる前の女の子たちの書いたメルヘン］［悲しみは愛よりも年上です］［少女のための天文学入門］など、それぞれのテーマごとに分かれて紹介されています。また、詩というよりはちいさな物語という感じの作品を集めた［子猫図書館］や、特別扱い ( ! ) で、薄いみどり色の紙に印刷された［浅見遙子のために紙で作った人形の家］などもあります。
あと、オレンジ色の紙で折込形式の付録になっている「新・メルヘン小辞典」もとってもキュート！宇野亜喜良さんによる表紙イラストも、この本はまた格別かわいらしいので、どうぞお楽しみに♪

• 「新・メルヘン小辞典」より、ちょこっとご紹介

• いちご〔strawberry〕赤ずきんちゃん
• 小鳥〔bird〕豆歌手
• たんぽぽの種〔seed of dandelion〕春の落下傘
• どんぐり〔acorn〕豆のキューピー
• 日記〔diary〕１日のかけら
• にわか雨〔scole〕雨の駄々っ子
• 花〔flower〕ミツバチとチョウチョのカフェ
• ペンギン〔penguin〕よちよち紳士

• 一篇の詩は
• 一曲分の舞踏にどこか似ている

• 晴れ着を着た心と
• どこか物足りぬ感傷と

• 少年時代に観た映画のタイトルが
• 「舞踏会の手帖」であった
• はじめて舞踏会に行った少女が
• 何人かの男にダンスを申し込まれる
• そして一緒に踊った男みんなに
• 手帖に名前と住所を書いてもらう
• 何十年か経って　その手帖を頼りに
• 「はじめてダンスを踊ってくれた男」を訪ねてゆくと
• ある人は殺人犯に　ある人はアルコール中毒の医者に
• ある人は市長に　ある人は死人に
• と　変りはてている
• 老いた少女は　舞踏会の手帖一冊に
• 人生というもののにがさを知らされるのである

• ところで　この詩集に同じタイトルをつけたのは
• 同じように
• 何十年かたったら　出品者の一人ずつを訪ねてみたい
• と思うからである
• 平凡な母親　孤独な娼婦　売れっ子の女流詩人
• 大女優　女詐欺師
• どのように人生の変転が見られるだろう

• はじめて詩を書くことと
• はじめて舞踏会に行くのとが
• 同じであるような本にしたいと思って

• この本を編集してみました

…長くなってしまいましたが、こんな感慨深いエピグラフが掲げられている「あなたの詩集４」です。

読者から投稿された詩やイラスト、それから「おませなツインキー」などかわいげな映画のスチール写真で彩られたこの本は、［魔女たちの舞踏会］［恋のわらべ唄］などと、詩たちがテーマ別に紹介されています。

ユニークなのは、音楽家・ミュージシャンに関連する詩（楽譜つきというのもあります！）が目立つところ。なお、巻末には［もう一つの愛のメロディ］として「時には母のない子のように」の作曲者である田中未知さんが〈あなたの詩〉にメロディをつけたものが、空色のページで紹介されていたりと、楽しい企画も♪

• 「あなたの詩集４　舞踏会の手帖」に載せる詩を募集したところ“とてもたくさんの「いい詩」”が集まったことから２册に分けられ誕生した『舞踏会の手帖』の“一卵性双生児”本です。

• 眠るのがこわい
• あなたの夢を見るから

• わかれた人のことは　
• もう思い出したくないのです

• でも
• チェホフおじさんは言いました
• 「夢だと思っているのが現実で現実だ
• と思っていることが夢だった」という
• 夢もある　と

• だから安心しておやすみなさい

• ことばが眠ると愛が目ざめます
• 愛が眠ると星たちが目ざめます
• 世界は大きな夜の中にあります

…こんな素敵なエピグラフが掲げられたこちらの第５詩集は、“本の中に小さなもう一つの本がある”という趣向で「悲しみの終わるとき」という薄紫色の小冊子が挟み込まれていたり、“女の子の詩集に仮装してまぎれこんできた”男の子たちが投稿した“なかなかくやしくなるような詩ばかり”を集めたコーナー［悪漢たちはロバに乗って］があったりと、いろいろと趣向が凝らしてあります。

そしてもちろん寺山修司さんによる各コーナーの紹介文は洒落ていて、大きな楽しみの１つ♪
また、「おませなツインキー」など映画のスチール写真や読者投稿の挿絵も、時々見入ってしまうほどかわいげだったりします☆

• 家なき子は　いつも家をほしがっています
• 恋なき子は　いつも恋をほしがっています

• 書物は恋なき子の家です
• 詩は恋なき子の恋です
• この本はそんなつもりで編みました

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集６」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［少女童謡集　長靴をはいた猫からの手紙］、［なんでも商会］、［愛の教室］、［涙の博物誌］、［恋なき子］、４人の詩を集めた［恋のわらべ唄］、大型新人！才女！！と謳われた岸田理生さんの作品を薄い紫色のページにまとめた［鉛筆になった少女］、他、ベージュ色の紙で小冊子風に挿み込まれた［ぼくの豆劇場　一線一行物語］など…。

あとがきで寺山修司氏は述べています“ぼくは数千人の中から犯人をさがし出すシャーロック・ホームズ探偵のように、虫メガネで、数千人の少女詩人のことばを吟味し、推理し、そして選択したのです”と。

• おもいで

• 私が　シャックリをしていたら
• 紙に「ワッ！」って書いて渡してくれた人なのです
• 映画館でピストルがこちらに向いたら
• 「殺される」って私をかばった
• 人なのです
• プリンアラモードを注文しても
• 絶対プリンをたべなかった
• 人なのです
• 私が　ロバート・レッドフォードが好きだといったら
• 「じゃ　ぼくのライバルだ」ってちいさく言った
• 人なのです
• でもそれきりなにも言わなかった人なのです

• 図書館でおとをたてまいとつま先で歩いて　ころんでしまった
• 人なのです
• 日本の国歌は　ほたるの光だと
• 信じてうたがわなかった
• 人なのです
• 時計屋の前で
• 時間の全部ちがう時計をみて幸せになれた
• 人なのです
• 雨の日
• 「かわいいガールフレンドがいるってウワサよ」って言ったら
• ばんがさを　くれた
• 人なのです
• なにが　なんだかわからない
• 人なのです

• 冨田好子

• １００人のアリスが恋をしたので不思議な国は大さわぎ！
• チエシャ猫はやきもき
• 気狂い帽子屋はやきもち
• 台所でくすぶるやきもつ
• まがい海亀はやきもの
• しかも　相手はたった一人の詩人だというのです

• 何をかくそう　その詩人というのは　ぼくです
• という想いをしました

• １０００人の女の子の詩をよむのは
• １０００人の女の子の恋文をよむのと
• 同じくらいたのしい仕事でした

• ルイス・キャロルこと　数学者のドジソンおじさんも言っています
• 「恋をすれば　誰でも不思議な国へ旅ができるのだ」と

…ラストのルイス・キャロル氏の言葉は、かなり不確実な引用だと思われますが ( ! )、いつもながら遊び心たっぷりのエピグラフが掲げられた「あなたの詩集７」です。

読者から投稿された詩とイラストが［壜の中のラブレター］［魔女の時間割り］［恐怖譚］［恋人の耳はロバの耳］［コレクタア］などテーマ別に紹介されている他、投稿者の１人をピックアップしてまとめて紹介したコーナー、また、巻末には薄い紫の紙で、すでにデビューし各方面で活躍していた岸田理生さんの［少女のための幻想的な猫の百科辞典　不眠症の猫］が読めたりもします。

カバーと巻頭カラーが沢渡朔さんの『少女アリス』の写真で彩られ、“今回はいままでで一ばんすばらしい「あなたの詩集」です」”という言葉まで添えられた (!) 、期待も高まる１冊となっていますよ☆

• マザーグースの童謡にこんなのがあります

• ソロモン・グランディ
• 月曜日に誕生
• 火曜日に命名
• 水曜日に恋愛
• 木曜日に発病
• 金曜日に悪化
• 土曜日に死亡
• ソロモン・グランディ
• これでおしまい

• 人生はとてもはかないのです

• この本が
• どうして「水曜日」の天使なのか
• わかりましたか？

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集８」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［絵本売り］、［人生万才！］、［流れ星のバラード］、［恋することは食べることだ］、［土曜日の画廊］、［恋という名の雑貨店］、１人の作品をピックアップした［林百合亜の小詩集　ユリアの無人島］［大島愛の小詩集　ミッキーマウス時計は１０時２８分］、［おぎのまりの小詩集　世界でいちばんクレイジー］、３人の作品をまとめた［三つのオレンジの物語］…バラエティに富んだ作品が収められています！

• にっき

• ゆっくりじてんしゃをはしらせると
• かぜがうたってるのがきこえます
• かぜとおんなじはやさではしるのって
• とてもたいへんなんです

• おひるのてれびはつまんないから
• ずっと７ばんをかけてたんです
• じい……ざぁざぁ……
• いつか　みらいがうつるようなきがする

• ちいさなあくびが　ひとつ
• はずかしそうにでてきたら
• やさしいかぜとひかりとが
• しょかのべっどをつくってくれます

• すきとおるようなあおぞらと
• まぶしすぎるおひさまの
• やさしいしせんをせなかにのっけて
• ゆっくりゆっくり　しずんでゆきます

• なんのゆめをみたのかしら
• ただ　とってもながいんです
• ずっと　どこまでもつづきそうで
• つかれてしまってめがさめたんです

• ゆうぐれどきのおへやは
• ふしぎないろのうみのようです
• めをつぶってしんこきゅうをしたら……
• きっちんからすーぷのにおいがしました

• 林百合

• 水の子オルフェは
• はずかしがり屋です

• 水にうつったときしか
• ほんとのことを言いません

• だから
• この本に集めたのは
• 水に書く詩のアンソロジーです

• うそだと思ったら
• ひとさし指で
• 水に書いてみてください

• きっと水の中から
• すばらしい男の子があらわれて
• あなたに恋を
• ささやくでしょう

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集９」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［砂に書いたラブレター］、［シャボン玉遊戯］、［髪の小詩集］、［みじかい恋の長い唄］、［愛はやさしい獣］、［そら豆のバラード］、［猫ではじまる物語］、１人の作品をピックアップした［なぎさの小詩集／ムギ］、［若月由理亜のアンソロジー　教室のユリア］、［日高芽々のひとりごと　洗濯船］、［原田幸恵　えみりいと十三月］…バラエティに富んだ作品が収められています！

• コクハク

• 私は十七歳になった今でも
• 寝るときには腹巻きをしています
• 夏でも冬でもこの毛糸の腹巻きです
• おなかが冷えるからでもなく
• 雷さまからおへそを守っているわけでもなく
• これは習慣です

• 私は六年たった今でも
• ひとりになるとあなたのことを思い出します
• いつでもふと現われるのです
• 初恋を大切にしたいからでもなく
• あなたの印象が強烈だったわけでもなく
• これは習慣です

• 田沢ジュン

• あなたの詩集の十冊目は
• 「鏡の国のあなた」です
• 読みはじめる前に　まず　鏡を見てください
• そこにうつっているあなたと
• 読み終わったあとで　鏡にうつっているあなたとは
• 同じ顔をしているでしょうか？

• いいえ
• よく似ているけど少しだけ
• どこかちがっているはずです

• その
• 二人のあなたのちがいを知るために
• ながいながい
• 鏡の国の
• 詩旅行が
• 必要なのです

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集１０」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［愛の大工　心の修理をします］、［魔女たちの三行広告　告知の詩集］、［アリス地獄　幻想水族館］、［愛の天文学　星の詩集］、１人の作品をピックアップした［不思議の国行きの切符　きのゆりの小詩集］、［るしあん　木野まり子］、数人の作品をまとめた［三人姉妹］、［二輪車　お月さま論争　おもいで調理法］、他、ピンク色の紙で小冊子風に挿み込まれた［エドガー・アランポエム夫人の物語］など、バラエティに富んだ作品が収められています！

• かなしみ

• 不思議の国行きの切符は
• 子どものしかないと
• 夢駅の窓口で
• 真っ白い
• ろばさんに言われました

• きのゆり

• たった一本の鉛筆で書いた詩が
• あなたをシンデレラにしてくれるのです
• さあ　いそいでください
• 時計が十二時を打つ前に書いてしまわないと
• あなたは少女じゃなくなってしまって
• 書いた詩は
• 風に舞う木の葉になってしまうでしょう

• 気をつけなきゃいけないのは
• おせっかい屋の消しゴムおじさんです
• 消しゴムおじさんは
• せっかく書いたあなたの詩のなかの少年音楽師を
• 消してしまったりするのです

• この鉛筆がもう少し長かったら
• もう少し長い詩が書けたのに

• そうすれば
• 少年と少女とが海辺の別荘で再会する
• ハッピーエンドになったのに

• なんて言うのは　やめましょう

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集１１」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［ささやきの花束］、［あなたのための魔女入門］、［キャベツ・ラブソング］、［奇妙な味の料理人はアリスが大好き］、［人恋い童謡集］、［風景のある詩と詩のある風景］、［あなたに似た女の子］、１人の作品をピックアップした［水村梨乃の小詩集　なのはな］、［麻野あけみの小詩集］、［青春のフルーツ・パフェ　樹里久美］、［ユリアのために　林百合亜の小詩集］、２人の作品をまとめた［二人のロッテ］…バラエティに富んだ作品が収められています！

• 少女

• 咲かないままで　つみとられた
• 少女の柩に花を飾ろう
• 夜毎　語った月のほかには
• 知るひともなかった
• 少女の柩に花を飾ろう

• 糸の切れた首飾りを
• 一緒に持たせて葬ってやろう

• まっすぐな長い髪のなかだけが
• 世界のすべてだった

• わたしのどこかでひっそりと
• 息絶えた

• 少女の柩に花を飾ろう

• 砂岸あろ

• 赤い鳥逃げた
• というのが　十二冊目の
• あなたの詩集のタイトルです
• さて皆さん
• あなたなら

• 猟銃をもって
• 追いかけますか？

• それとも
• 鳥籠の口をあけて
• 帰ってくるのを
• 待ちますか？

• いいえ
• あなたの詩の中から
• 赤い鳥が逃げたのなら
• また新しく赤い鳥を
• 書きたせばいいのです

…いつもながらに趣向を凝らした、こんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集１２」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［空っぽの鳥かご］、［人あて鬼のメルヘン］、［鳥迷宮］、［きのゆりと七人の小人］、［鳥類百科辞典］、１人の作品をピックアップした［あたしがまだ小鳥だった頃　樹乃の小詩集］、［恵夢の小部屋　一秒詩集］、［赤花抄　森洋美の小詩集］、２人の作品をまとめた［ハミングバード］、３人の作品をまとめた［三羽の鳥］…バラエティに富んだ作品が収められています！

• ひとりぼっちの童話

• 白雪姫なんて毒りんごを食べてしまえばいい
• マッチ売りの少女なんて裸足で歩けばいい
• 小公女なんて女中のままでいればいい
• シンデレラなんて階段から落ちればいい
• 親指姫なんてもぐらのお嫁になればいい
• アリスなんてハートの女王につかまればいい
• 眠り姫なんておばあちゃんになればいい
• エルザ姫なんて魔女裁判で死刑になればいい
• オデットなんて白鳥のままでいればいい
• 織り姫なんて彦星と会えなくなればいい

• ――ひとりぼっちの童話です

• 渡辺理香

• ジュリエットは
• 数学の成績がわるかった
• なぜなら
• 引き算がまったくできなかったからである

• たぶん　ジュリエットは
• 大人になっても
• ひとと別れることなどできないであろう

• 「引き算はさみしいからきらいです」
• とノートに書いたジュリエットは
• いつまでも一人ぼっちである

• ジュリエットは
• 一からは　どんな数も
• 引くことができないということを　知っていたのだ

• 〈孤独〉
• 一と一とを足してもやっぱり一のままであった

• 〈ひとときの別れ〉
• 二から一を引いてもやっぱり二であることに変りがなかった

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集１３」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［エドワード・リアおじさんの真似をして「ことば遊び」してみたの］、［ひとりごと　だまってはるのしがいをみてた　よってたかって　はないちもんめ］、［少女のための殺人学入門］、［ぼくには　もうこんなやさしい恋の詩は　書けないなと思ってえらんだ］、［海では飛べない］、［わたしの指がみどりいろのへびになる］、１人の作品をピックアップした［田沢美登里の地球学校］、［森洋美の犬の生活］、［ほうえいたかこの「湯気占い」と五つの詩］、２人の作品をまとめた［佑依と久実子の二人詩集　犯罪　薔薇十字　童謡］…バラエティに富んだ作品が収められています！

• 今日のメニュー

• バスルームには
• あたしの恋といっしょに
• あの子が死んでいるから

• あたしは　笑いこらえて
• スライスオニオン

• テーブルの上には血まみれマリーが坐ってる

• シチューは　コトコトいって
• 今日のメニューは何にしようかと
• 人生がつぶやいた

• ふろむ・あとむ

• 朝のコーヒーカップの中に
• 空から墜ちてきたぼくの天使！

• そんなびっくりするような　詩のアンソロジーが
• できあがりました

• ある朝　目がさめたら
• ぼくの書いた詩集から　すべての文字が消えていた
• ぼくはさっそく　捜索願いを出した

• まもなく
• 名探偵オーギュスト・アンパンがやってきて
• 虫メガネで部屋中をさがしまわっていたが
• 大声で叫んだ　「見つけたぞ！」
• 「どこに？」と思わずぼくが訊きかえすと
• 名探偵オーギュスト・アンパンは　もったいぶって言った
• 「順列をかえて変装し　文法の黒メガネをとりかえて
• ちょっと見てもわからぬようにして……」
• 「あなたの詩集のページの中に　生まれかわっていたのだ」と

…いつもながらに趣向を凝らしたこんなエピグラフが掲げられている「あなたの詩集１４―１５」です。

詩や物語をテーマごとに紹介した［喪服のランデブー］、［少女たちのナンセンス詩集「壜」］、［壜の中のドラキュラ氏］、［ああ　パンツ物語　ブラック・ユーモアがあるのだからローズ・ユーモアがあってもいいのだ］、１人の作品をピックアップした［草薙汐美の幻想譚「天使論」］、［伝奇集　紫藤直美］、［森洋美の梗概館　双生児のドーリア］、［木野まり子の小詩集　月曜館便り］、数人の作品をまとめた［二つの物語　消えてしまった子供たち　仁科未来］、［飛ぶ鉛筆］…バラエティに富んだ作品が収められています！

• 魔女学校―入門のための十カ条―

• ☆入門資格
• 恋人を三人以上ふった経験のあるかたに限ります

• ☆音楽テスト
• マザーグースを三曲以上そらで歌うこと

• ☆センステスト
• 服装は黒一色と規定するが　アクセサリーだけは別色とし　そのセンスをみる

• ☆工作テスト
• 流れ星のかけらでおしゃべり鏡をつくる

• ☆超能力テスト
• 三枚のクイーンのトランプを見せ　どれが魔女かを当てさせる

• ☆スポーツテスト
• 初めて魔法のホーキに乗って　どれぐらい速く飛べるか

• ☆美術テスト
• 四千粒の銀の砂を集めて　仮面をデザインする

• ☆証明問題
• ＵＦＯは　魔女の最新式のヨーヨーだということを　三日以内に証明する

• ☆理科実験
• 月の満ちかけと　カボチャ大王のごきげんの関係についてグラフをつくる

• ☆調理実習
• 天の川の星と　太陽の涙と　月の光で　おいしいクリームパフェをつくる

• 佐々木則子

現在確認できている「あなたの詩集」シリーズ・最終巻です。
楽しみにしていたエピグラフがなくってちょっと淋しい…と思っていたら、カバー見返し部分に岸田理生さん以来６年ぶりという‘フォアレディース賞’の発表がありました。
歌人として、また後にファンタジー小説の書き手並びに翻訳家としてご活躍される井辻朱美さん（掲載作品はＳＦ小説［ザ・テール・オブ・ザ・スターリット・シティ］）、そして“かつて吉屋信子がはたした役割を埋めるような”“硝子絵のように透明ではりつめたロマネスク”と寺山氏をして評さしめた、旧仮名遣いも美しい邑崎恵子さん（掲載作品は［七月(ふづき)の葵(あふひ)］、ちなみに作品を彩るイラストは鳥図明児さん）のお２人です。（邑崎恵子さんは現在、田中淑恵さんというお名前で、装幀家としてご活躍の一方、文筆家として、また豆本作家としても数々の作品を生み出されていらっしゃいます！）。

他、詩や物語をテーマごとに紹介した［猫はもう帰らない］、［泣き笑いの花束ピエロびたし］、［センチメンタルな子豚ちゃん］、１人の作品をピックアップした［ヘルムート］、［水村梨乃の小部屋　バルビゾンの春］、数人の作品をまとめた［三人姉妹　二千羽の鳥］…いつもながら、バラエティに富んだ作品が収められています！

• 蝉の森

• 蝉時雨(せみしぐれ)　母の
• 日傘でうけながら　あなたを
• 送ってゆく時は　訳もわからず
• 鳴きたてる　かれらの
• いのちが　妬(ねたま)しい

• ないて　いち日　やりすごし
• ないて　二日を　塗りつぶす

• 陽ざしにぬれた　樹に
• 集(つど)い　記憶の内部(なか)のしなやかさ
• 吸いつくそうとしながらも　草叢(くさむら)に
• いまは沈む　抜殻(ぬけがら)を
• 異国の細工物だと　嘲(あざけ)るかわり
• なつかしんで　また鳴いている

• 幾つも
• なりたいものは　あったのに

• 無口になった　日傘の陰で
• にわか雨を　願いはじめている

• 水村梨乃